こんにちは、仙台のメンタルトレーナーの吉田です。
こちらの記事では、「なぜ人は人間関係で悩みを抱えてしまうのか?」について、
言い方、伝え方の観点からお話が出来ればいいなと思っています。
例えば、あなたが家でゆっくりと本を読んでいた時、お子さんがテレビゲームを大き
な音で始めたとします。
そんな時に、私たちはついついつい、
「どうして宿題してからゲームしないの!」
「いっつもゲームばかりして!少しは勉強しなさい!」
と関係ない話を持ち出して相手を叱ったりします。
関係のない話を持ち出さなかったとしても、悪いのは「大きな音でゲームをして自分
の読書を邪魔している子どもだ」と決めつけ叱ります。
これは、部下が仕事でミスをした時も同じことが言えます。
「どうしてミスしたんだ!」と、ミスをした部下が悪いという具合に、相手を攻撃す
るようなことをついつい厳しい口調で言ってしまいます。
そういったイライラする感情の裏側には、「本当はもっとこうして欲しかった」とい
う期待が隠れていたりするのですが、そうした本音部分を伝えずに、ついつい相手を
責めてしまうのが私たちだったりするようです。
本音を隠してコミュニケーションするから失敗する
私たちは、誰かの期待に応えるために生きているのではなく、自分の欲求を満たすた
めに生きています。
お互いに「こうしたい!」という自分の欲求を持っていますから、時には、その欲求
同士がぶつかり合うこともあります。
例えば、あなたが家事の合間にリラックスして本を読みたいという欲求を満たすために、
大きな音でゲームを始めたお子様に「ゲームじゃなくて宿題をしなさい!」「ゲームは
うるさいからやめなさい!」としかると、自分の欲求を一方的に否定されたと感じた子
供は、頭にきて抵抗することでしょう。
そして親が、力を使って抑圧したりすれば、子供に無力感を植え付けてしまい、
「自分の欲求は通らない」「自分の意見には価値がない」と自己肯定感をぐっと下げて
しまうことでしょう。
アイ・メッセージとユー・メッセージの違い
こんな風に、自分の欲求、つまり自分の本音を伝えずに、相手を攻撃するようなメッセ
ージの伝え方を、カウンセリングやセラピー、コーチングの世界ではユーメッセージと
言います。
自分の欲求を伝えるわけですから、本来なら主語が「私は」「私が」になるべきところ
を「あなたは」「あなたが」で伝えてしまうやり方です。
ですが、本当は困っているのは、「あなた」ではなくて「私」なのですから、主語を
「私は」とか「私が」にしないと変ですよね?
では、どんなふうに伝えればいいのでしょうか?
例えば、
「◯◯ちゃんのゲームの音が気になってお母さんは本が読めないの。もう少し音を小さくしてくれたら、お母さんは助かるんだけどな。それについてどう思う?」
こんなふうに、私は、私がと主語を「私」にして伝えていくのです。
私が期待していたこと、つまり本音をしっかりと伝えた上で、一方的にならないよ
うに「あなたはどう思う?」「あなたはどう感じる?」と相手の本音も聞いていく
ようなコミュニケーションをするということですね。
こうしたメッセージの伝え方をアイメッセージと言います。
こんな風に伝えてみると何が起きるのかというと、
「お母さんの意見に対して、僕は・・・」と、相手の立場になってしっかり考えてから
行動するということを学んでいきます。
例えば部下がミスした時「どうして君はミスしたんだ!」と相手を責めるのではなくて、
「◯◯君なら今回の仕事をしっかり完成させてくれると期待して任せていたんだ。だけど、今回ミスしたということで、私はとても驚いているし、今後も仕事を任せたものかどうか今、とても心配しているんだ。それについてどう思う?」
こんな風に、アイメッセージで本音をしっかりと伝えていくと、
「そうだったんですか!次こそ頑張ります。任せてください!」と、前向きな意見を引き
出していくことができます。
イライラの感情の裏側にあるもの
ここで大切なことは、相手の行動や発言にイライラした時、実はその裏側にあるのは、
相手に対する期待や欲求、きっとこうしてくれるはずという思い込みなんです。
ところが私たちは、本音を語らずに、相手を責めてしまって、相手のやる気を削いでし
まったり、相手に反発心や無価値感、罪悪感などを植えつけたりしてしまいます。
僕自身、娘が小さかった時、遊園地で娘が迷子になったことがあります。
その時、親の感情として一番最初にあるのは「心配」や「何かあったらどうしようとい
う恐れ、不安の感情」だったりするのですが、それを伝えることなく妻にたいして、
「どうしてしっかりと手をつないでいなかったんだ!」と責めてました。
そして、案内所で娘が見つかった時に、ほっと一安心しているにも関わらず、その気持ち
を伝えないで「どうしてフラフラわき見してばかりで、ちゃんとついてこないんだ!」と
ユーメッセージで相手を攻撃してました。
こんなふうにして私たちは、ついつい自分の欲求や本音を隠したまま、相手を責めて
しまう。
うっかりすると、それを暴力という形で相手を攻撃してしまう。
すると暴力を受けた子供は、暴力が怖いという理由で親のいうことを聞くようになる。
そして、その子供は自分が親になった時に、自分の子供を叩いてしまうという暴力の
連鎖が起きてしまう、、、。
これはパワハラなんかにも同じことが言えます。
チームが激変した、たった一つのきっかけ
ある管理職の方、ここではAさんとしましょう。
僕はある日Aさんからこんな相談を受けたことがあります。
「吉田さん聞いてください。
私の部下は、私の元上司なんです。
その上司はとても厳しい人で、昔はいっつも怒られてばっかりいました。
ところが昨年定年になって嘱託社員扱いで、今は私の部下としているのですが、私のいうことを全然聞いてくれなくて、仕事が全然進まなくて困っているんです」
この上司の方は、「もっとバリバリ営業してくれないと困る!」と、毎日、営業日報
の数字を見せながら部下に小言を言い続けていたそうです。
ところが、部下の一人である元部下は、全く動いてくれない、、、。
チームのベクトルは合わないしギクシャクするし業績は達成しないしで、心が潰れそう
になって来たそんなある日、Aさんは意を決してアイメッセージで本音をぶつけました。
「今月も私たちの営業所は目標達成率がワースト1位です。
ですが、それは責任者である私の問題です。
最近、営業日報の数字を見ていると、私はとても胃が痛くなって、職場に向かうのがとても苦痛です。
どうすればもっと営業成績が伸びるのか?
やることは全部やっているし、これ以上のいいアイディアも現状では浮かんでいません。
部長から電話が来るたびに、左遷させられるのではないかと内心いつもビクビクしてるんです。
そして、部長から業績に関する小言を言われるたびに、頑張りますしか言えない自分がとても情けないんです。
本当は”今月は任せてください!”って胸を張って堂々と部長に言ってみたいんです。
ですが、現状では何をどうすればもっと業績がアップするのか完全に袋小路の状態です。
ですが、これは皆さんの問題ではなく、責任者としての私自身の問題です。
どんなことでもいいから、少しでも業績アップにつながるアイディアがあったら、情けない話ですが是非教えてください」
こう言ったそうです。
それに対して、元上司の部下はどうしたでしょうか?
それまでと同じように「ふん!勝手にすれば?」という態度だったでしょうか?
これは実際に、僕がマンツーマンでセッションをしているクライアントさんのことなの
ですが、Aさんのその発言が終わるやいなや、その元上司の部下は、
「Aさんがそんなふうに思っていたとは知りませんでした。
そして、私たちを頼ってくれたのも初めてですね?
私の経験が本当に役に立つかどうかわかりませんが、現在、業績面で伸び悩んでいる
メンバーに私が同伴営業をしてみてもいですか?」
と言ってベテラン営業のノウハウの育成役を買って出てくれたそうです。
これにはAさんも思わず涙が止まらなかったといってました。
これまで、自分は管理職として、上司として「自分のやり方が正しい」「自分の言う
通りにしないから成績が上がらないんだ!」と勝手に思い込んで叱責ばかりしていた。
そのせいで、部下からは恐れられたり、影で反発ばかりされていた。
でも、自分の本音をさらけ出した時、ガラッと関係性が変化した。
Aさんは振り返ってこう言ってました。
アイメッセージで本音を伝えてみませんか?
年頃の娘さんが夜遅く帰ってきたとき、
「一体何時まで遊んでいるの! 何回、電話よこしなさいって言えばわかるの!」
というのではなく、
「何の連絡もないまま遅い時間になると、私は心配で不安でいてもたってもいられ
なくなるの。ちゃんとどこそこにいて何時頃帰るって連絡をもらえればすごくホッ
としてお母さんは安心できるの」
とアイメッセージで伝えてみてはどうでしょうか?
私たちは身近な人ほど、本音を言わずに、ユーメッセージで相手を傷つけたり抑圧
したりします。
ですが、本当に身近な人だからこそ、アイメッセージで本音をしっかりと伝えてみて
はいかがでしょうか?
「君が企画書をきっちり作ってくれたおかげで、今回のプレゼンが通ったよ。
ありがとう」
「ご飯を食べるときの元気な”いただきます”っていう声が私の活力なの」
「人が嫌がる仕事も黙って引き受けてくれて、私は本当に君に感謝しているんだ」
こういったアイメッセージによる本音トークは、人間関係を円滑にする潤滑油の役割を
果たしてくれると思っています。
いま現在、ギスギスした人間関係の中にいると感じているなら、アイメッセージで本音
を伝えることで、コミュニケーションに少し油をさしてみてはいかがでしょうか?
こちらの記事も参考にしてみてください。
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