こんにちは、
仙台のメンタルトレーナー吉田です。
セールスや企画の仕事に携わっている人なら、
一度は経験した事がある「では、持ち帰って検討させてください」という言葉。
実際に、他社と比較検討をしたり、
詳細を詰めるための「検討」をする場合もありますが、
その多くは「遠回しなビジネス的断り文句」です。
「本日はご説明ありがとうございました。では、検討して必要な場合はこちらからお電話致します」
こう言われ、折り返しの電話が来るのを期待して待っていても、
いつまで経っても電話が無いという経験をされた方も多いでしょう。
どうやら、この原因のひとつに『Yes but法』の間違った使い方があるようです。
【Yes but法とは】
相手の言い分をまずは受け止め、次に相手の言い分に反論することを伝えると言うスキルのこと。
相手の意見・主張に対し、正面から否定・反論するのでなく、一旦納得・賛成・共感した上で、自分の考えを述べるというものです。
これによって、相手の「疑念」を取り除き、こちらの提案を受け入れやすくするスキル。(例)「なるほど、おっしゃる通りですね。しかし、この◯◯は、、、、」
このスキルは、営業やセールスの研修で教わったという経験をお持ちの方もいることでしょう。
しかし、実際にこの『Yes but法』を使ってみた方はおわかりだと思うのですが、イマイチ使えないのです。
おまけに、相手の反応が良くなるどころか、
使えば使うほど反応が悪くなってしまったという経験をされた方もいるかも知れません。
その結果が「では、検討させて下さい」ということです。
実は、この『Yes but法』、相手の『No』を引き出しやすくする会話にしてしまうのです。
そうなると、あなたの目的はいつまでも達成できませんね。
そして、無理にクロージングに持ち込もうとすると、
「いらないって言ってるだろ!もう二度と来るな!」ということにも成りかねません。
なぜ、そんなことが起きるのでしょうか?今回は、目からウロコの正しい『Yes but法』の使い方です。
なぜ、『Yes but法』が、相手から「NO」を引き出しやすくするのか?
これは実際の会話で確認すると、その構造がよくわかります。
お客さま「う〜ん。A社の商品と比べて性能がいいのはわかったけど、、、。でも、言うほどそんな大きな差はないですよね?」
営 業「そうですね。カタログで見るだけでは、おっしゃる通りかも知れません。ですが、弊社の製品を使って頂ければ、格段に使いやすくて、これまでのようなストレスは感じないと思います。」
お客さま「そうなんだ、、、。でも、ちょっとA社と比べると高いよね。」
営 業「そうですね。確かに、A社と比べると割高です。しかし、弊社はA社にはない、無料の24時間保守点検サービスがあるので、ご安心してご利用頂けると思います。」
お客さま「そうだね〜。まあ、とりあえず社内で検討させて下さい。こちらから、改めてご連絡します」
いかがでしょうか?
そして、この会話の問題点はどこにあると思いますか?
それは、この会話の構造が、営業もお客さまもお互いに「Yes but法」になってしまっている点です。
一旦は相手の言い分を肯定し(Yes)、
そして「but」を挟み込んで自分の意見を主張するという、
お手本のような「Yes but法」なのですが、
お互いに使ってしまうと、ただの「意見の応酬」になってしまうのです。
でも、なぜ売り手側が「Yes but法」を使うと、
買い手側も「Yes but法」を使ってしまうのでしょうか?
それは、「but(しかし)」の後にくっつく言葉を、
人はより強調した言葉と受け取ってしまうために、
「Yes but法」を使われた相手は、自分の意見を「強く否定された」と感じてしまうからなのです。
例えば、「しかし、天気がいいね〜」 「しかし、これ面白いね〜」
という時、人は「ただ天気がいい」「普通に面白い」という意味ではなくて、
「無茶苦茶、天気がいい!」「最高に面白い!」という意味で「but(しかし)」を使っています。
ここに『Yes but法』の落とし穴があるのです。
「but」の後に続く「〜と思いますが」というのは、
あくまでも「営業側」の意見であって、
「お客さま側」の意見ではありません。
「but」を使う事で、せっかく一旦は肯定した事実があるにも関わらず、
その肯定した部分よりも、反論がより強調されてしまうのです。
ですから、相手は自分の意見を「強く否定された」「押し売りされている」と感じ、
その反論に対抗(自己防衛本能)するための反論をムキになって言ってくるという連鎖を生み出すのです。
「あなたがおっしゃることはわかります。でも、私の言っている事の方が正しい」
聞き手である相手は、実はこのように受け取ってしますのです。
ですから、
話し手が「but」を使うと、聞き手も「but」で返したくなる
これでは、良好なコミュニケーションには到底なるとは思えませんよね?ということです。
あなたは、正しい『Yes but法』の使い方を知りたいとは思いませんか?
目からウロコの、正しい『Yes but法』の使い方
こちらも、実際の会話の事例を見た方がわかりやすいと思います。
お客さま「う〜ん。A社の商品と比べて性能がいいのはわかったけど、、、。でも、言うほど大きな差はないですよね?」
営 業「そうですね。カタログで見るだけでは、おっしゃる通りかも知れません。どれくらい性能の差をお望みでしょうか?」
お客さま「そうだね〜、今よりも5%くらい性能があがると助かるね。」
営 業「確かに5%の性能アップは嬉しいですよね。こちらをご覧下さい。比較検証テストの結果、他社の同ランクの製品と比較した場合、性能の差は8%〜10%もアップしています」
お客さま「そうだね〜。でも、値段がね〜」
営 業「確かに価格はA社と比較すると、性能の圧倒的な優位性の分、若干高めと感じるかも知れません。ちなみに、弊社の無料24時間保守点検サービスはご存知でしたか?」
お客さま「24時間保守点検が無料なの?」
営 業「はい。これは同業他社さまにはないサービスです。お客さまが割高とお感じになられる部分には、実は他社様が有料で行っている保守点検サービス費用も全て含まれているのです。それも24時間です」
お客さま「へえ〜。これはいいね〜。電話一本で来てくれるの?」
営 業「勿論です。その際には、、、、、」
いかがでしょうか?
察しのいいあなたなら、最初の会話との大きな違いに気づいたことと思います。
この事例の中では、営業は一度も『Yes but法』を使っていません。
なぜなら、
『Yes but法』とは、会話の相手が自らのNO(疑念材料)を解消していくように仕向けるために使うものなのです。
相手が『Yes but』を使えば使うほど、実は相手の本当に欲しいモノの確信に近づく事ができるのです。
『Yes but法」効果的な使い方
やり方は、とてもシンプルです。
相手が何か反論をしてきたら、まずは「Yes」で相手の考え方を受け止めます。
そして、その次は「but」で返すのではなくて、
「この言葉の裏に隠された疑問、不満、不安はなんだろうか?」
「この人が本当に求めているモノは何だろうか?」
このように、言葉としては直接発していない相手の心理を考え、
大きく2つの方法で相手に切り返します。
それは、「質問」「事実」です。
では、ひとつずつ見て行きましょう。
「質問」で、相手の『Yes but』に対処する方法
例えば上の会話例をもう一度振り返って見ましょう。
お客さま「う〜ん。A社の商品と比べて性能がいいのはわかったけど、、、。でも、言うほど大きな差はないですよね?」
営 業「そうですね。カタログで見るだけでは、おっしゃる通りかも知れません。(お客さまはどれくらいの性能の差があれば購入してくれるのだろう?)どれくらい性能の差をお望みでしょうか?」
これは、この( )で括った下線部分を質問として相手に返してみることで、
「Yes butのループ」から抜け出します。
また、これによって、相手の本当に欲しいモノの確信に迫ることが出来ます。
また、もう一つの事例では、
お客さま「そうだね〜。でも、値段がね〜」
営 業「確かに価格はA社と比較すると、性能の圧倒的な優位性の分、若干高めと感じるかも知れません。(お客さまに価格差の価値をわかってもらえるものは何だろう?)ちなみに、弊社の無料24時間保守点検サービスはご存知でしたか?」
こちらも、相手の「Yes but」に質問で対処することで、
「Yes butループ」から抜け出す方法です。
そして、質問のスタイルに見せかけて、実は「商品メリット」を伝えているところもポイントです。
このように、質問に形を変える事で、相手の潜在意識にメリットを埋め込むことが出来ます。
「事実」で相手を『Yes but』につなげる方法
今度は、相手の意見(真意)を引き出すために、
相手に『Yes but』を使ってもらうための誘導話法です。
こちらも、先ほどの事例で振り返りましょう。
営 業「確かに5%の性能アップは嬉しいですよね。こちらをご覧下さい。比較検証テストの結果、他社の同ランクの製品と比較した場合、性能の差は8%〜10%もアップしています」
お客さま「そうだね〜。でも、値段がね〜」
こちらは、事実のみを述べるに止めて、意見は一切入れていません。
あえて最後に「いいと思いませんか?」と入れることで相手をリードするというのも手ですが、
ここは事実のみで止めて沈黙します。
そうすることで、相手はきちんと考える時間を持てます。
相手の疑問、不安、不満を全て解消することが出来たなら、
そのセールスや企画提案は成功へまっしぐらなのです。
ですから、相手に考えてもらうための「時間」を提供するために、
事実のみを伝えて沈黙するということです。
『Yes but法』の本当の威力とは
大切な事なのでおさらいしますが、
『Yes but法』は、相手に使ってもらうものです。
あなたが、相手のNOに対して『Yes but法』で返してしまうと、
相手もさらに『Yes but法』で返してくるので、
生産性のない会話になりがちなことは、はじめにお伝えした通りです。
この『Yes but法』の本当の威力は、クロージングのいらないセールスや企画提案を実現することです。
相手が感じている疑念を、誰かに説得されるのではなくて、
相手自身で解消していくように会話がすすんでいくため、
とても納得感が高まるのです。
そうこうする内に「欲しい理由は沢山あっても断る理由がなくなる」のです。
最後に、このテクニックを使うための大前提としては、
「しっかりとした商品(サービス、企画)知識」や
「その商品(サービス、企画)に対する絶対の自信」が無いと、
相手の「But」に押されてしまいます。
これらがないと、
相手に突っ込まれた際に、
自分のボロを隠そうとしてつい反射的に相手のYes butに巻き込まれてしまいます。
その結果として「では検討させて下さい」と遠回しなお断りをされてしまう泥沼に陥ります。
単なる上辺だけの応酬話法のテクニックではなく、
相手の疑念を全て解消し理解、納得をしてもらうための、
クロージングいらずのテクニックが『Yes but法』ということですね。
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